先日、少し記事にしました件です。
以前弊所で帰化申請をお受けし、無事日本国籍を取得されたご依頼者から、今度は、亡くなられたお母さまの預貯金等の手続のため、韓国の書類の取得と翻訳をお受けし、とりあえずは、ご依頼者が金融機関から指示された書類をそのまま一旦ご用意しました。
その内容は、日本の書類で例えれば、被相続人の最後の戸籍にあたる範囲でしかない書類で、相続人の特定には程遠い内容でした。
確かに、ゆうちょなどの場合は、貯金の金額等によっては、父母の婚姻後の戸籍でよいとされるケースも実際にはあり、必ずしも出生からのすべてが必要でないこともまれにありますが、今回指示された書類はその範囲も網羅されていない内容でした。
韓国書類にお母さまの死亡の旨が載っておらず、
「韓国に死亡の届出をしてから、死亡記載がある韓国書類をもう一度提出してください」
と言われたと、ご依頼者からまた相談があり、
内心
「やっぱりな」
と思いました。
金融機関の担当者は何もわかっていないなと、うすうす感じていましたので。
といいますのも、在日韓国人の方に関して言えば、死亡の届出を韓国に届出していることのほうが少ないぐらいで、韓国の書類に載っていないことは日常茶飯事であるため、私が知り限りの相続手続きで、韓国に死亡届を出していないからと言って、手続きができなかったということは現時点まで一度もありませんでした。
もちろん、金融機関、証券会社その他相手先が一般の会社の場合は、それでも必要と言われれば、こちらとしてはどうしようもないのですが、そもそも在日の方が日本で死亡して、韓国に届出する場合の証明書類は日本の死亡届を提出するのであり、その死亡届には、医師の死亡診断書等も載っているわけですから、死亡届で確認で十分死亡を認めることができる、というのが実務的な考えです。
それを韓国の書類に記載されていないと認めないというのは、上記のような実状を一切知らないということにほかなりません。
もう、これはご依頼者の手におえないということで、間に入らせていただき、直接担当者と話しましたら、
案の定、全く分かっておらず、分かっていない人が、分かっていないご依頼者になんだか分からない書類を用意してと説明するものだから、ご依頼者は本当に困ってしまうことになるのです。
結局、最後の戸籍にあたる韓国書類だけでは足りないので通常の相続に必要な分を用意する(この案件は、身分関係の重要な部分が記載されていなかったりしますので、他にもいろいろ韓国書類以外にも必要なケースにあたります)、死亡届でとりあえずよい、ということになりました。
最後の戸籍にあたる書類に家族関係は全部載ると思っていたそうです。
実際には、その前の古い戸籍に当たるものを追っていかなければ、相続人を特定することはできないのです。
このご依頼者は、駆け込み寺的に、当職にご相談いただけるところがあったので、よかったのですが、一般の方が自分で手続きをしようとすると、非常に大変な思いをすることが簡単に想像できます。
実際に、途中で手続きを諦めて、数年経ってから弊所にご相談される方も多くいらっしゃいます。
もし、在日韓国人の方の相続で自分では難しいと感じられたら、なるべく早い段階でご相談いただければお役に立てると思います。
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