相続放棄という手続きは、通常は亡くなった方に負債が多く、相続人が引き継がないためにすることが多い手続きです。
具体的には、家庭裁判所に相続放棄する方が相続放棄申述書を提出し、受理されることによって相続開始時に遡って相続人でなくなるという手続きとなります。
ところが、最近続いて何件か、プラス資産、特に不動産を所有されていた方の相続人からの相続放棄の手続のご相談をお受けしております。
それぞれ、様々な経緯や事情がおありなのですが、資産があるのに放棄するケースとしては、相続人のうちの何人かが行方不明で、不動産を相続人の誰か特定の人の名義にすることが今すぐには難しい状況であり、なおかつ不動産を売却できたときの価値がそれほど大きくない場合があります。
不動産を相続人の中の誰か特定の人の名義に変えるためには、基本的には相続人全員の協力がないとできません。
相続人のうち行方不明者がある場合、特に日本籍ではなく、在日韓国人の方などの場合は、日本人のように戸籍附票や住民票を戸籍からたどることができないため、見つけることはかなり困難となります。
また、韓国書類の発行についても、請求権者が限られているため、相続人を特定する書類がすんなり取得できるとは限らず、本当に前途多難な状況で、手探り状態で進めなければいけないケースも少なくない状況です。
どういった方法で居場所が分からない人を調べるのか、不在者という前提で別の手続を選択するのか、どの方法をとっても、簡単に特定の相続人の名義にすることはできず、費用と労力、時間がかかることになります。
色々と動いた末に名義を変更できない可能性もゼロでないとすれば、固定資産税や、マンション管理費(ここについては、放棄していても管理義務があるという問題はありますので、請求される可能性は全くないとは言えませんが・・・。)その他不動産に関する債務を負担するという事態を考えると(不動産は名義を変えないと売却はできませんし、税金等は誰かが支払わなければいけないものですので)
上の労力や費用などと、実際に売却できたときの不動産の価値などを比較して、相続放棄を選ぶ方は増えている印象です。
相続は、その方によって様々で、個別に判断していくしかないと日々感じております。