「自分名義の不動産の名義について、生前に子供などに贈与しておけば、自分の相続のとき手続きが複雑にならないですか?}
というご相談をよくお受けします。
前提としては、不動産の所有者が、韓国籍の方、あるいは、元々韓国籍であった方が途中で日本に帰化された方である場合です。
上記にあたる方は、御自身が今まで手続き関係で、領事館で読めない書類を取り寄せたり翻訳文を用意したり、それなりの手続の複雑さを漢字て来た方となります。
大体は、今回は、韓国籍の親の名義の不動産の相続登記手続きで弊所に依頼され、自分に相続が発生したときに、またこの煩雑な手続きを子供とかがしないといけないかと考えると、心配だというご相談です。
結論から言うと、相続手続きだけのことを考えれば、生前贈与しておくほうが、もちろん楽です。
ただし、生前贈与は簡単にできると思っては危険です。
法律行為の贈与に関しては、双方の同意があれば簡単にできますが、贈与することにより発生する税金があることを忘れてはいけません。
特に不動産などですと、価値が高いことが多いので、何も知らないで、素人考えで不動産の名義だけ自分で変えてしまうようなことをすると後でとんでもないことになる可能性があるのです。
生前贈与する場合は、税務上の特例など(例えば、相続時精算課税制度や夫婦間贈与の特例など)を利用できるかどうか、利用できる場合はそれに関する税金の申告が必要となること、利用しない場合は贈与税がどれぐらいかかるのか、贈与税の申告等も併せて確認し調べることが必須となります。
(税金については、どの方法が一番その方にとってメリットがあるのかは、個別に違うことになり、税理士などの専門家に相談をする必要があると考えたほうが無難です)
よって、相続手続きが面倒になるからという理由だけで生前贈与を選ぶのは、一般の方の取りがちな最悪な方法となりえる話ですので、生前贈与はご自身で勝手に決めて登記してしまうことだけは避けていただきたいです。
では、煩雑な手続きを避けるために何ができるか?
といえば、
1.自分が生きているうちに用意できる書類は用意しておく
2.きちんとした遺言書(公正証書遺言がベスト)を作っておく
の二つの方法がお勧めです。
1.自分が生きているうちに用意できる書類は用意しておく
は、例えば、帰化した方の場合は、帰化するまでの韓国書類(韓国の戸籍にあたるようなもの)は、今から準備しておくことが可能な部分がほとんど(全部集まる場合のほうが多い)ので、今のうちに弊所のような法律の専門家で韓国手続きに精通した事務所に依頼し、書類と訳文を完備しておき(ご自身で用意するのは難しいですので)自分に何かあったらこの書類を使うようにと推定相続人に伝えておくという方法は有効です。
2.遺言書をきちんと作っておく
公正証書遺言等きちんとした手続きで使用できる形で遺言書を作成しておけば、大抵の場合は、普通の相続手続きに必要な韓国の書類より少なく済むこととなります。
特に帰化された方に関しては、帰化後の書類で関係を証明できれば韓国書類が不要になるので、メリットはあります。
(ただし、公正証書遺言を作成する段階で、関係を証明する書類の提出は求められますので、残念ながら全くいらないとはいきません。)
不動産は名ばかりで贈与税もかからない建物(ただし、固定資産評価が掛かってなくても、借地権などがある場合があるので、素人判断は危険)の贈与などの場合は、生前贈与も選択肢に入るのかとは思います。
他の様々な事情によってもどの方法がよいというのは異なってくるので、個別に判断していくしかないですね。